数茂2つめの目的地は、松前神楽の写真が気になり小平町にした。
以前から松前神楽には興味を持っていた数茂だったが、道北に熱心な保存会があるのは知らなかった。
小平でまず最初に向かったのは臼谷漁港。ホタテやタコなどの新鮮な魚介類が安く買える直売所が並ぶ人気のスポットだ。
直売所のお母さんに声をかけられ、タコを試食(※1)。「うまい!」。
続いて訪れたのは望洋台キャンプ場。
高台から望む日本海の景色はまさに絶景で、北にまっすぐ伸びる日本海オロロンラインの眺望が楽しめる。
祖父が愛用していたカメラ(※2)は、古いがとても手入れが良く、まだまだ使えそうなので持ってきてみた。
どんな写真が撮れているか楽しみだ。
次に向かったのは、重要文化財「旧花田家番屋」。
明治から昭和30年前後までの間、まさに北海道の基幹産業であったニシン漁の歴史を今に伝える施設である。
「番屋」とは毎年ニシン漁の季節にやってくるたくさんの雇われ漁夫たちが寝泊まりした場所で、
旧花田家番屋は北海道内に現存する番屋では最大の規模。明治38年頃に建てられたものだという。
内部は、約200人の漁夫たちの生活の場であった板敷の居間や囲炉裏、台所、寝どころなどが再現されているほか、
漁具やもっこ、食器などの展示も豊富で、ニシン漁が盛んだった時代の喧騒がよみがえってくるようだ。
最後に訪れたのは今回の旅のメインとなる鬼鹿厳島神社。
宮司の瀧川司さんは、ここ鬼鹿に松前神楽を伝えた瀧川弁蔵氏の曾孫にあたる人物で、
鬼鹿松前神楽保存会の活動を精力的に行い、伝統芸能の保存に努めている。
祖父が昔撮った写真を見せ、松前神楽の話を聞かせてもらう。
明治期以降、ニシン場の北上とともに松前神楽も伝えられてきたのだそうだ。
かつて栄華を誇ったニシン漁と、その発展とともに伝えられた伝統芸能。
毎年5月に行われる「鰊番屋祭り」では、旧花田家番屋で松前神楽が奉納されるそう。
まさに、ニシン漁華やかかりし時代にタイムスリップできる瞬間だ。
「絶対観に来よう」と心に誓う数茂だった。
※1)通常、こんな大きな切り身が試食で出てくることはない。
※2)ミノルタハイマチック7S。1966年発売で、レンジファインダーの名機。
瀧川司
鬼鹿厳島神社 宮司