日本の獣害史上最大の被害といわれる、大正15年に起きた三毛別羆事件。
山間部の開拓集落を冬眠を逃して狂暴化した羆が襲い、10名もの死傷者を出したという痛ましい事件である。
その事件が起きた地が、数茂の次の目的地、苫前町だ。
祖父の写真に写っている地元の猟師さんにも会いに行き、話を聞きたいと思っている。
まずは写真が撮られた「ローソク岩」に行ってみる。
写真と比べると少し背が低いように感じる。
むかしはもっと大きな岩だったのが、長年波風にさらされているうちに削られて現在の姿になったのだそうだ。
ふと、風車が風を切る音に気づき、後ろを振り返る数茂。
丘の上には大型の風車が約40基並ぶ、国内最大級のウィンドファーム(※1)があるのだ。
風車群の中に佇み、風を感じる。気持ちの良い風と、風車が立ち並ぶ豪快な風景に、思わず深呼吸する数茂だった。
次に向かったのは「苫前町郷土資料館」。
途中、苫前町役場前にある4mはあろうかという巨大な羆の像をバスの車窓から見る。
バスを降り、「古代ロマンロード」を歩いて郷土資料館へ。
館内は「北海太郎」と名付けられた体長2.5mの羆のはく製をはじめとして羆関係の資料が充実しており、
もちろん三毛別羆事件についても迫力の再現展示などで紹介されている。
実際にこんな事件が起こったのかと思うと背筋が寒くなる思いがし、
それと同時に、羆をはじめとした野生動物と人間との共生という、
北海道人が忘れてはいけないテーマについて考えさせられる数茂だった。
続いては、祖父の写真に写っていた猟師、林豊行さんを訪ねた。
林さんは現在、苫前町猟友会の会長で、駆除目的で鹿を撃っているのだそうだ。
写真を見せると、すぐに祖父のことを思い出してくれたようだ。
猟についての話をいろいろと聞かせてもらう。
駆除の対象になっているとはいえ、やはり鹿も動物であり一つの命。
その命を獲るということの重みは大変なもののようだ。
命の重み、野生動物との共生・・・難しいテーマに触れた数茂は、夕陽が見たくなり夫婦愛の鐘へ。
と、そこには先客が。同じように夕陽を見に来ていた天羽である。
同じような境遇で”るもい”を旅することになった2人が、すれ違う・・・。
この時点では、この先の運命を全く知らない2人だった。
夕陽とともに、日本海に浮かぶ夫婦島、天売島・焼尻島がくっきり見えた。
「次はあの島へ行ってみようかな・・・」
※1)上平グリーンヒルウィンドファームは、苫前ウィンビラ発電所(1,650kW×14基、1,500kW×5基)、
苫前グリーンヒルウィンドパーク(1,000kW×20)からなり、合計出力は50,600kW。
林豊行
「とこやはどこやここや」店主
苫前町猟友会会長